探してる





幼い日々は短く、一年などあっという間に過ぎ去り。
与えられる愛情や生活習慣、生きてゆく為の土台を得る。
されど、人格の基盤を作る最も大切な時期に全てを見放された子供は、幼い日々など有しはせず、理解する前に本能が覚えさせた。

それは幸か不幸か。

ゆらゆらと立ち上る煙が部屋に充満する頃。三代目火影は気だるげにキセルを吹かす。
子供を取り巻く現状。変わらない里人。
抱えるには重過ぎる、罪。
果たして何が幸せで、どれが不幸なのか。
著しく慮しくない現状に、杞憂は尽きることなく。
キセルからは立ち上る紫煙。
吸い込んだ煙を寄せた眉根のまま、天井に向けて吐き出して。
換気を促すものは、そこに居なかった。



キーワードは金色。
それと空の様に突き抜ける、青。いや、海の様に深い、蒼。
気が付けばだるそうにしながらも、常に周囲を探す癖が付いていた。
忘れられない色彩は、シカマルが7歳になっても強く、脳裏に刻まれて。
黄金を持つものを探し続けてる―――

出逢ったのは5歳の時。
奈良家の有する土地で。
今思えばたった5歳のガキ一人に鹿の世話なんか任せるなよ、と思わなくもないのだが、そこは大らかな父母の豪快な笑顔の裏(つまりは脅し)まで読み取れてしまった自分を恨む。
しかし、両親はシカマルの回転の良すぎる頭に嫌悪を示す事はなかった。
そう、笑顔に隠されているモノを正確に理解出来る子供というのは。此れ中々に、周囲の反応やら自分の立場などこれまた正確に判ってしまい、自粛の道を辿る。
そこにしか、生きる術がないと悟るのだ。・・・悟られない愚か者なら元から嫌悪と畏怖の対象にはされまいて。
余計なところにまで思考を辿らせてしまったシカマルは、そこではたと思い出す。
頭の回転が良すぎると、無邪気に周囲に知らせていたのはこの頃ではなかったかと。
きっかけとなった出来事を、思い返して顔を顰める。

共通するのは金色の。

けれどあまりの違いに苦笑する。
片や薄汚れた砂埃に塗れて。
片や散りゆく黄金に紛れて。

姿も状況も余りに違いすぎるのに、共通点は同じ色彩という事実に。
なのに、どうしてか。
苦笑していたはずの口元は、真一文に変わる。
思い返した二つのそれ。

嘗て見た金色が、重なって見え。
シカマルは、ここに決意をした――――


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