情とは。
@感覚によっておこる心の動き。
間を飛ばして、
D本当の気持ち。本心。
此れ如何に?
言葉の意味を調べても、監事の意味を調べても、辿り着く、それ。
@とかAの「快・不快を感ずる主観的な意識」だとかB「おもむき、味わい」は判る。だがしかし、Dの本心とは?
そもそも、「情」が判らない者にとってはいくら言葉を調べても、見えないそれは不可思議なものであり、けれど与えられているであろう「何か」が、知りたくて。
「知りたいと思うこと、それも要求というのだよ」
皺だらけの手が、そっと金色の髪を撫ぜる。
老人は小さな、ホンに小さなその子供に、御伽噺を聴かせる様に言葉を紡ぐ。
「お前はもっと、求めて良いのだ」
初めて、与えられた「優しい」温もりに目を細め、それでも問うような視線を送れば皺だらけだけど、暖かなその手の人は言うのだ。
「求めなさい。お前が欲する人を。お前を欲する人を―――」
例え、どんなに底辺たる場所にいようとも。
梟の声さえ聞こえない、闇に包まれた森林。
圧し掛かるような暗闇が支配する、その場所は。
破壊された祠が一つ。打ち捨てられて。
研がれすぎた感覚に、暗闇など意味を成さない。その、視力さえも闇に慣れてしまえば、夜の闇など薄明かりに包まれているようなものだ。
目を凝らすことなく初めて訪れたそこをじっくりと辺りを見回せば、元は手入れされていただろう、敷き詰められた石畳も、社も。おひねりも。ただ野ざらしに、雨風に晒されて。
降り立ったその場所は、けれど。
―――何の感慨も浮かばなかった。
ナルトはじっと、中心にある壊された祠を見詰め。
己が腹に手を当て、呟いた。
「なあ。お前は何を求めたんだ?」
帰らぬわが子の姿か。
血塗られた里人の姿か。
それとも、何も求めず暴れていた?
「それは感「情」というものなのか?」
風が通り抜ける事もない、ただの暗闇の中。
問いかけのみが、空しく闇に吸い込まれていった――――
参考:学研/新版 漢字源、岩波書店/広辞苑第四版より抜粋。