探してる

10



時は遡る事二カ月前。
火影より暗部名を賜りし「黎」ことシカマルは、順調に任務をこなして早一月。目立った失敗をすることもなく、期限内に正確にSランクの任務でさえたった一人で完遂させてくる彼に火影は満足げに目を細める。通常ならば暗部でもマンセルにて任務を与え遂行させるのだが、シカマルは自ら入隊するときに出した条件に火影を納得させる力をこの一ヶ月で証明して見せたというわけだ。嬉しく思わないはずがない。ただ、現実が与える重みに良心が痛むだけで・・・。
痛みには気が付かないとばかりにキセルからふう、と一つ吸い込んだ煙を吐き出す。
目の前に頭垂れる忍の報告書に目を通し終えた火影はことり、とキセルを脇に置き、両手を顎の下で組んで返答を待つ目の前の青年の姿を一通り眺めて漸く口を開いた。

「黎よ。そなたのこの一月の働きを解くと見させてもらった。・・・主が出した条件に見合った実力があることを認め、主が認めるものが現れるまで一人で任務に当たる事を許可しよう。」
「ありがとうございます」
淡々と答える青年姿の、未だ15に満たぬ少年に火影は視線を逸らす事はなく。じっと見つめることで何かを伺っているようだ。
顔を上げいと火影の言葉にすっと下げていた頭を上げる忍とその主の視線が交わった。
互いに内情を悟らせぬ、読めない表情が一瞬の攻防を果たし。
だが、目の前の老人の火影はプロフェッサーとも異名を持つ。その知識、狡猾さは例えIQ200を超えるものが目の前にいようとも、様々な経験を得て今を尚生き抜いているこの老人が・・・今はと注釈が付くが・・・経験不足も顕な子供を出し抜けないはずがない。
読めない表情の奥から何を読み取ったというのか。口端を上げて古狸は笑う。




「―――して、お主は「何」を望むのか」

その言葉にシカマル臆こともなく。むしろ我が意を得たりと不敵に忍の主たる火影に笑って見せた――――






天は高く、空気はもやっとしていた暑さを忘れたとばかりに清で。萌ゆる緑はいつの間にか新緑から小金へとひっそりと衣替えをしていく。
巡る季節は何度目か。
稲穂が黄金に輝く季節に、思い描くはただ一人。


火影邸を後に少年は今宵も背負った任務に走り出す。



今はまだ、遠くとも。

必ず見つけ出すと心に誓って――――――

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