8
朽ち果てた社。
闇に葬られた血脈。
眠る真実は。
禍々しいチャクラが、無尽蔵に木の葉を襲った。
「きゃああああああ!!」
「うわああああああああ」
人々は叫び、或いは逃げ惑う。
「〜こっの!!!」
「化け物め!!!!!!」
襲い掛かる恐怖にパニックに陥った里で、それでも秀でたる木の葉の忍び達は懸命にも襲い来る強大な力に立ち向かい、そして力及ばずに散ってゆく。
悪夢のように、広がる恐怖は炎と共に里を飲み込んで行き、やがては木の葉もお終いかと誰かが嘆き始めた時。
立ち上がった木の葉の「希望」。
そして。
災厄は木の葉を去り、されど深く刻まれた恐怖はやがて形を変えて。
木の葉の腐敗は、滅ぼされたものが最後に掛けたこれこそ呪いではなかったのか。
それを知ることはプロフェッサーと名高い3代目火影とて出来ぬ相談で。
真実を知る者は、今は只、深く深く眠るだけ。
誰も何も気付かぬまま、時は過ぎ去り。
10年前の妖弧襲来による傷跡は、今尚深刻な忍び不足を齎せている。
しかし、忍びの里の中でも1,2を争う木の葉の里には、ここ数年名を馳せている忍びが居た。
そこにまた一人、名を馳せることになる忍びが誕生する事はまだ誰も知る由もない。
「今日この日この時を持って、奈良シカマルは、火影直属特別暗殺部隊第零班所属、諜報解析部に在籍し、3代目火影の名の下木の葉の忍びとして里に仇為す事無く里の為に尽力し、火影の一駒となる覚悟を持って忠誠を誓います」
「承認する」
「就きましては火影様により名を頂きたいと存じます」
「・・・よかろう。――今よりそなたの名は『黎<れい>』とす。
奈良シカマル、いや「黎」よ。火影の名の下に特別暗殺部隊第零班、諜報解析部所属の一員として本日より心して任務に励むが良い」
「はっ」
「して、そなたの初任務じゃが―――」
誰も、たった今、暗部となった少年が、ホンの1年程で、木の葉の里の1・2を争う実力者の中に名を連ねようとは。
「では、行くがよい」
「御意―――」
それほどまでに急成長を遂げる彼の、真意が何所にあるかさえ、今はまだ。
全てを隠す闇夜が、宵闇に紛れて疾走する影を悟らせぬように、月明かりさえも飲み込んで。
闇に隠れて蠢く思惑さえも、全て闇に。
眠れる真実は、果たして、誰の為にその姿を見せるのか。
今全ての鼓動は始まらん―――――