探してる





忍びの里・木の葉。
火の国の、忍びの里の中でもっとも勢力を誇る木の葉には、長である火影を始め、ビンゴブックに名を連ねる猛者が数多く、数ある忍びの里の中で、最強の名も欲しい侭にしていた。
だが、4年前。里が強大な災厄に見舞われた。

九尾の狐。

それが災厄の名前。
一国を簡単に滅ぼせるほどの力を持つ大妖が里を襲ってきたのだ。
里は巨大なる力になす術もなく、家屋は瓦礫と化し、女・子供はもちろん、里の実力者である上忍を始め暗部でさえ次々とその力の前に屈していった。
里人は目の前の破壊に絶望するしか術はなく。
しかし、たった一つ。希望があった。
希望の名は火影。木の葉歴代の火影の中で最強と謳われる4代目火影その人である。
彼は、里人の希望を一身に受け、そして裏切らなかった。

かくして4代目により九尾は封印されたのだった。

里人は歓喜した。例え4代目という英雄が命と引き換えに齎されたモノだとしても。




里の中、いや、唯一の商店街が軒並ぶ町の路地裏でそれは行われていた。
ガスッ。ドカッ。バキッ。
そんな表現がしっくりくる暴力の音。
大の大人が数人、取り囲むように一人を寄ってたかって暴力行為を行っていた。
よくよく見れば、暴力を受けているのは明らかに幼いといえる子供だ。彼ら加害者の半分の背にも満たない幼子が、先ほどから絶え間なく、殴る、蹴る等の暴行を受けている。なのに、誰も止めようとも、助けようともしなかった。
そこに有るのはただ、ただ。憎悪と悪意。侮蔑。人間の持てるマイナスの感情が幼子に向けられて。
幼子は、綺麗に洗えばさぞ、美しい光を放つであろう金の髪を土埃塗れにし、晴れ渡る青空の澄み切った青を宿したその瞳をキツク瞼の下へと覆い隠し、明らかに栄養が行き渡っていない細い手足を縮こまらせ、只管に暴力に耐えるしかなかった。
こんな事は然程珍しいことではない。むしろ日常範囲の事で。
他の里の子供ならば絶対に受けない仕打ち。だが、事、この子供に関しては誰も何も疑問を持たずに行われるのだ。
それは何故か。
「何故お前が生きている!」
「死ね!死んでしまえ!!」
「お前さえいなければ!!」
「何故あの人が死んでお前は生きている?!」

「この化け物が!!!!!!!!」

子供の名は、うずまきナルトという。
里にとってもっとも忌むべき10月10日に生まれ出でたる。そして。4代目火影がその命を賭し、封印せしめた九尾の器として選ばれた、哀れなる生贄なのだった。
彼は生まれ出でたその日より、誰に祝福される事なく、九尾の容れモノに選ばれ、受け入れる大きさがあったばかりにばかりにこうやって謂れのない暴力を受け続けているのだ。
―愚かな里人は気付かない。
この里が、この子供なしでは復興も、まして己が今、在ることが適うのも子供あってこそなのだと。
子供の犠牲なしではこの里は生きていけないのだと言う事に。

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