薄暗闇の中、中央に置かれた明かりの、じじじと言う燃える音が重苦しい空気に拍車を掛けるようだ。
「・・・そなたも暗部とはいえ人の子、此れまでと同じく狐に惑わされミイラ取りがミイラにならぬようにな」
明かりを挟んで対面する相手を見下すように老婆は見下すように言い捨てる。
「良いか、相手は狐。人を化かす事に長けておる。ゆめゆめ惑わされるでないぞ」
老人が厳しい顔付きで老婆の言葉を継いで言えば。
「・・・御意」
か細い蝋燭の向こう。
片足を着けて頭を下げたままの忍は是と返すだけ。
其れは暗部たるもの、拒否はすなわち反逆。たちまちに謀反とみなされ捕らえられ抹殺されるだろう。
但し、如何なる時も応としか応えられないように、というのは特定の暗部にだけ適用される事ではあったが。
「では、行け。失敗は己が命で贖うが良い」
老婆の言葉を持って任務は遂行されるべく、暗部の姿はその場から消えた。
「・・・フン、化け物は化け物同士で潰しあうが良いわ」
「・・・・・・」
老婆の拭いようのない嫌悪を顕にした言葉はその場から消えた暗部にも聞こえただろうか。
厳しい表情を崩す事なく沈黙で持って老人は暗闇に返した――――
「・・・クソババアがっ」
だだだだだだ、と擬音にすれば恐ろしく速いスピードで森を駆け抜ける音を表現するのに、流石は弧の刃随一を誇る特殊暗殺部隊―通称暗部―の者。駆ける足音など一切立つ事はなく、目にも留まらぬ速さ故に只人ならば風が吹き抜けたとでも感じるだけだろう。
まるで突風のように目的地へと向かう暗部の姿に、良く目を凝らせば解るであろうか。その影が余りにも小さいということに。
否。
影は元より本体たる人物が、成長していない幼子の姿をしている事に。
走りながら悪態を吐く子供の名は奈良シカマル。
史上最年少にして暗部入りを果たした・・・正式には暗部の又暗部と言った二重の・・・要は暗部に紛れ込まされたホムラとコハルの私兵というのが妥当だろう。
シカマルが幼いながらにしてすべてを理解しうる頭脳を持つと、おそらくシカマルを恐れたのだろう一族の誰かがあの老人達に自分を売り、それから強制的に暗部入り・・・暗部の間者とさせられた。
そして現在に至る。
「化け物同志潰し合わせようなんて魂胆どんな馬鹿でもわかるっつ−の!」
あ〜腹が立つ。
ぶつぶつと不満を零しながらも目的地へと向かう足は止まる事はなく、風に紛れるように進むだけ。
「しかし、”うずまきナルト”かあ。どんな奴なんだろうな」
向かう先に居る人物こそがシカマルが命を下された相手。これから抹殺するべく人間に、その存在を知ったときから実はシカマルの興味を引いて止まなかった。
「腹に妖弧を封じ込められた運が悪い奴か〜・・・」
何気なく呟いた自分の言葉に眉間に皺が寄る。
生まれながらに勝手に器とされ、封印に使われた憐れな犠牲者に対し、妖弧に襲われ傷付き仲間を失った木の葉の里の人間は、感謝こそすれその赤子を大切にしなければならないはずなのに、いなくなった妖弧の代わりとして憎む対象にし、行き場のない怒りを赤子にぶつけるという醜悪な姿を曝した。
二代目火影はそんな民衆に気付きながらも復興を優先し、赤子はひたすらに人々の憎しみを受けて絶命しようとした瞬間、現れた大妖と共に姿を消したという。
以来、外れの森に住まうようになり、それを知った愚かな里人が次々に森へと赤子を殺しに行こうとするも誰も帰ってこなくなったという。
それは妖弧に家族を奪われた暗部も例外ではなく。
あの森へ向かった人間は未だ誰一人として、戻ってはこなかったのだ。
それを、やっと十になったばかりのシカマルにあの老人達は命を下したのだ。
”禁忌の森に住む妖とその子供を殺して来い”と――――
「あいつが死ぬか、俺が死ぬか。または相打ちか。どれに転んでも奴らには得しかないってか」
言ってシカマルは超馬鹿。と笑う。
「誰がお前らのクダラネー考え通りに生かせるかっての!」
先程の不機嫌さはどこへ行ったのか、足取りも軽く向かう。
目指すは禁忌の森。
「さて、うずまきナルトさんよ、俺の期待を裏切ってくれるなよっと」
ニヤリと大人顔負けの笑みを作ったシカマルの、描くは面白おかしい未来。
死なんて全然感じない。
ただ、予感が。シカマルの後押しをする。
―――これから出会うであろう”うずまきナルト”と、きっと面白い事が待っている。
何の確証もない、優秀な頭がはじき出した答えではないけれど。シカマルは自分のカンを疑いもせず。
ただ、これから出会うであろう人物にひたすら思いを馳せるのであった。
「・・・そなたも暗部とはいえ人の子、此れまでと同じく狐に惑わされミイラ取りがミイラにならぬようにな」
明かりを挟んで対面する相手を見下すように老婆は見下すように言い捨てる。
「良いか、相手は狐。人を化かす事に長けておる。ゆめゆめ惑わされるでないぞ」
老人が厳しい顔付きで老婆の言葉を継いで言えば。
「・・・御意」
か細い蝋燭の向こう。
片足を着けて頭を下げたままの忍は是と返すだけ。
其れは暗部たるもの、拒否はすなわち反逆。たちまちに謀反とみなされ捕らえられ抹殺されるだろう。
但し、如何なる時も応としか応えられないように、というのは特定の暗部にだけ適用される事ではあったが。
「では、行け。失敗は己が命で贖うが良い」
老婆の言葉を持って任務は遂行されるべく、暗部の姿はその場から消えた。
「・・・フン、化け物は化け物同士で潰しあうが良いわ」
「・・・・・・」
老婆の拭いようのない嫌悪を顕にした言葉はその場から消えた暗部にも聞こえただろうか。
厳しい表情を崩す事なく沈黙で持って老人は暗闇に返した――――
「・・・クソババアがっ」
だだだだだだ、と擬音にすれば恐ろしく速いスピードで森を駆け抜ける音を表現するのに、流石は弧の刃随一を誇る特殊暗殺部隊―通称暗部―の者。駆ける足音など一切立つ事はなく、目にも留まらぬ速さ故に只人ならば風が吹き抜けたとでも感じるだけだろう。
まるで突風のように目的地へと向かう暗部の姿に、良く目を凝らせば解るであろうか。その影が余りにも小さいということに。
否。
影は元より本体たる人物が、成長していない幼子の姿をしている事に。
走りながら悪態を吐く子供の名は奈良シカマル。
史上最年少にして暗部入りを果たした・・・正式には暗部の又暗部と言った二重の・・・要は暗部に紛れ込まされたホムラとコハルの私兵というのが妥当だろう。
シカマルが幼いながらにしてすべてを理解しうる頭脳を持つと、おそらくシカマルを恐れたのだろう一族の誰かがあの老人達に自分を売り、それから強制的に暗部入り・・・暗部の間者とさせられた。
そして現在に至る。
「化け物同志潰し合わせようなんて魂胆どんな馬鹿でもわかるっつ−の!」
あ〜腹が立つ。
ぶつぶつと不満を零しながらも目的地へと向かう足は止まる事はなく、風に紛れるように進むだけ。
「しかし、”うずまきナルト”かあ。どんな奴なんだろうな」
向かう先に居る人物こそがシカマルが命を下された相手。これから抹殺するべく人間に、その存在を知ったときから実はシカマルの興味を引いて止まなかった。
「腹に妖弧を封じ込められた運が悪い奴か〜・・・」
何気なく呟いた自分の言葉に眉間に皺が寄る。
生まれながらに勝手に器とされ、封印に使われた憐れな犠牲者に対し、妖弧に襲われ傷付き仲間を失った木の葉の里の人間は、感謝こそすれその赤子を大切にしなければならないはずなのに、いなくなった妖弧の代わりとして憎む対象にし、行き場のない怒りを赤子にぶつけるという醜悪な姿を曝した。
二代目火影はそんな民衆に気付きながらも復興を優先し、赤子はひたすらに人々の憎しみを受けて絶命しようとした瞬間、現れた大妖と共に姿を消したという。
以来、外れの森に住まうようになり、それを知った愚かな里人が次々に森へと赤子を殺しに行こうとするも誰も帰ってこなくなったという。
それは妖弧に家族を奪われた暗部も例外ではなく。
あの森へ向かった人間は未だ誰一人として、戻ってはこなかったのだ。
それを、やっと十になったばかりのシカマルにあの老人達は命を下したのだ。
”禁忌の森に住む妖とその子供を殺して来い”と――――
「あいつが死ぬか、俺が死ぬか。または相打ちか。どれに転んでも奴らには得しかないってか」
言ってシカマルは超馬鹿。と笑う。
「誰がお前らのクダラネー考え通りに生かせるかっての!」
先程の不機嫌さはどこへ行ったのか、足取りも軽く向かう。
目指すは禁忌の森。
「さて、うずまきナルトさんよ、俺の期待を裏切ってくれるなよっと」
ニヤリと大人顔負けの笑みを作ったシカマルの、描くは面白おかしい未来。
死なんて全然感じない。
ただ、予感が。シカマルの後押しをする。
―――これから出会うであろう”うずまきナルト”と、きっと面白い事が待っている。
何の確証もない、優秀な頭がはじき出した答えではないけれど。シカマルは自分のカンを疑いもせず。
ただ、これから出会うであろう人物にひたすら思いを馳せるのであった。