すき、きらい

―――昼間は嫌いだ。
「サクラちゃん好きだってばよー!!!!!」
今日は7班との合同任務。相変わらずサクラを追いかけ回すナルトに、
「ナルトうざっ!助けてサスケくぅ〜ん」
サスケを追いかけるサクラ。
「くだらねぇ。チッどべが手間かけてんじゃねえよ!」
「やあ、みんな若いねえ。…ナルトの腹チラ見え♪(ボソッ)」
何だかんだ文句をいいつつナルトを気にしてるサスケにナルトに関して変態振りを発揮し始めたカカシ。

「…めんどくせー」

それを眺めてたシカマルはボソリと口癖になっている言葉を吐き出す。
今日は7班との合同任務。だけどお寺の草むしり、なんて任務真面目になんてやってられない。ぎゃーぎゃーと煩い7班と真面目になんて特に。
「なあにサボってるのー!」
「シカマル、寝転がってても終わらないよ〜」
幼馴染が声を掛けてきても寝転がった姿勢から起き上がる気力はなく。たとえイノの鉄拳が飛んでくるまではぼんやりと空を眺めていたかった。

聞こえてくる昼間のあのこの声。
それはいつだって明る楽しそうで。
金色に輝く髪は光に反射して。
色白の幼い顔は真昼に輝く太陽みたいににししと笑ってる。

だけど。
悪戯しまくって迷惑ばかりかける悪ガキなあのこ。
ホントは寂しがり屋で頑張ってる誰よりも優しいことを知ってる人は極僅か。
見えない優しさを振りまくあのこは直視できない太陽みたいに眩しくて、笑いながら掛けて行く姿が眩くてそのまま日の光の中に吸い込まれてしまいそう。
だから日中は嫌いだ。
大切なあのこを解かしてしまいそうで。
手の届かない場所へと連れていかれそうだから。

「早く夜が来ればいいのに」

ボソリと言った言葉は誰にも聞かれることはなく。のんびりと空を眺めていたらついに真面目に任務をこなしていた彼女の怒りの鉄拳が落ちた。




「今夜はツーマンセルで行く。Sランクだ、と言っても俺とお前ならSランクの仕事でもAランク程度にしか感じないがな」
顔を覆われている中で唯一露になっている目を細めて挑発する孤刃<このは>に帆叢<ほむら>もにっと笑い返す。
「そりゃ光栄ですこと」

夜は好きだ。

カン、カカカカカッ!!!
ザッ!!!!
クナイの飛び交う音や、砂埃が舞い上がる大地。
きな臭い硝煙の匂いに飛び散る赤。
「くそ!!!たかが二人に我々がやられるなど!!!!!!」」
「まさか、こんなっ!数では我々の方が断然多いはずなのに何故?!!!!!!!」
戸惑いを隠せない声が己の居場所を示しているとは考えないのだろうか。
なんて、考えてる余裕は相手にあるはずないか、と影は笑う。
術など一切使ってない、武器だけで大人数を翻弄する相手に見るも無残に瞬殺されていく様に、現状を理解をすることも叶わず残りの一人が倒れた。
「・・・無駄口叩く前にもっと考えりゃあ良いものを・・・」
「考えても脳が足りなかったのだろう。人数は確かにSランクでも内容はBランク程度だったな」
超馬鹿、と事切れた相手に叱咤を飛ばす帆叢に、「これは中忍でも良い仕事だった」と顔を覆っていた面を取り外した弧刃が優艶な笑みを浮かべながら言う。
「やはりお前と組むと楽だな」
「つか、こんなんじゃお前一人でも余裕だったじゃねーか」
暇つぶしにもなりゃしねーと暗部の面を取って顔を顰めた男に、楽しそうに笑う弧刃。
弧刃の笑みで帆叢も楽しそうに笑う。それは滅多に見ることのない・・・いや、弧刃だけがみることのできる優しい笑みだということはお互いに自覚がないものなのだけれど。

眩しいばかりの太陽は身を潜め、静かにきらめく星々が宵闇に輝く。
闇が潜めく濃紺の空に駆け抜ける細い金の光はまるで、眠りを守る青い月の様で。
血塗られた地面に立つ、匂い立つ姿は人を時に狂わせる赤い月の様で。
闇を手繰るこの手で触れられなくとも、優しくも柔らかくて夜でこそ輝く月を見失いはしないから。


―――密やかに煌く夜を照らすその光を独り占め出来るから。

2009.03.02

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