「さて。今日は何の日か知ってるか?」
いつもの通り、だるそうにさも今思い出したとばかりにシカマルがソファの上でだれた格好のまま見入ってる本から視線を外す事無く言葉を紡ぐ。
「さあ?」
興味ないし、と答えるナルトが丁度夕飯の後片付けを終わらせリビングに戻って来たタイミングで掛けられた問いかけ。
そこにどんな意味合いが含まれてるかなんて自分の為に紅茶を入れるナルトにはどうでも良くて。
本に集中しているフリをしてそんなナルトを伺い見るシカマルの視線になど気が付かないようだ。
「なんか行事でもあったっけ?」
いい香、と自分で入れたアールグレイの香に目を細めながら適当に返事をするナルトに、シカマルも、
「何もない」
と答えた。
「何ソレ」
自分で焼いたクッキーをお茶請けに紅茶を一人楽しみながら呆れた声を出す。
「それって質問する意味あったの?」
「ある。」
むくり、と寝そべっていた身体を起こし、シカマルはテーブル越しにこちらを見る事無く紅茶を楽しむナルトの姿を捉える。
「じゃあ、先月の14日は何の日だったか知ってるか?」
「?なんかあったっけ??」
「思い出せよ、サクラとかイノとか恩などもが騒いでただろ?」
「ん〜?」
「ほんっと、興味ねーことは覚えてねーよな、お前」
くく、と笑うシカマルの声がいつの間にか近くに聞こえ、丁度1杯目を飲み干したナルトが声の聞こえた方を見れば。
「”ドベのナルト”があんなに騒いでたじゃねーか」
「ん〜?・・・ああ、バレンタインか。それが?」
どうかしたか、と問う前に、どうして俺は影縛りになんてあってるんですかね?
ジト目で見上げてくる青い目に、それはそれは楽しそうに笑う相棒の姿。
「さて、バレンタインはどんな日か覚えてるか?」
「あ?バレンタインがどんな日かなんて、」
「女が男にチョコを渡す日、ってことじゃねーぞ?」
「???じゃあ、他になにが」
ある、と言う前にぞくり、と鳥肌が立つ。
ぞわぞわぞわと、なんともいえない視線を送ってくる目の前の男の顔に、嫌と言うほど身を持って経験してきてるナルトは、暗部NO,2として。または戦略知将の異名をとる、この天才的頭脳を持つ男が向けてくる感情に慣らされた五感が反応してしまう。
「え?、ちょ、待て?」
「くくく、えらく敏感じゃねーかよ」
それはそれは楽しそうに笑う男に、ナルトは焦る。
「なんでっ、今更バレンタインなんてっ!」
「そ〜りゃあ先月の14日?逃げるなって言ったにも拘らず任務なんぞ入れてくれた恋人に待ちぼうけ食らわされた可愛そ〜な男がいてな。そいつが漸く、久しぶりに恋人と一緒の休みがもらえたわけだ」
「そ、そそそそれは悪かったって言ったってば!その埋め合わせだって・・・!!!!!!」
そこまで言ってはっとする。が、はっと気付いた時にはもう遅い。
「さて。バレンタインはな、ナルト。恋人同士が愛を確かめ合う日、なんだとよ?」
そ〜れはそれは素晴らしい笑みを持ってシカマルがバレンタインの本来の意味を教えてくれたと同時に、どこまでも策略で動く男は己の計画通り、ふ、と耳に吐息を掛けて恋人の抵抗を奪った男はほくほく顔で寝室に恋人を連れ込んだとさ。
おしまい☆
