ありえない未来





「シ・・カマル・・・っ!」
其れは自分の声なのかと疑いたくなるほど掠れた声だった。

何時の間にこんなに侵食されていたのか。
いつも自分を包んでいた優しい手、いつだって自分を甘やかしてた男のそれが。
翻るなんて思いつきもしないほど、いつの間にか溺れてた。
警戒を怠ることはすなわち「死」なのだと、他の誰より否と言うほど知っているのに。
「・・な・・・で・・・?」
「・・・・」
刻み込まれていたはずの警戒を、そんなモノを抱く事さえ忘れさせた人物がよりにもよって。
目の前で薄く笑う―いつもならばこれでもかと言うほど優しい色を宿していた瞳は冴え渡る月より冷たく。無機物のように感情を移さない瞳に映る、呆然とした顔の自分が信じられなくて。
「なぜって?わかんねーのか?」
歪めた口端を弧を描く様にさらに吊り上げて男―シカマルは冷たく言い放つ。
「お前が     だからだよ」
「――――!!」
くくく、と楽しげに歪んだ笑みを見せる目の前の男は誰だ?
どうして・・・・。
絶対的信頼と・・・初めて抱いた愛情を最悪の形で裏切られたナルトに、初めて信頼と愛情を覚えさせた相手が放った言葉は。
これ以上ないほどの絶望をナルトに齎した。
あまりにも手ひどい裏切りに声を放つことも、動くことも、目を反らす事も出来ない。

打ちひしがれるその姿。
黒曜に映るのはぼろぼろになった暗部総隊長「弧刃」。けれど、暗部における実力ナンバーワンの、忍びの頂点に立つと噂される孤高の獣の様な気高い姿ではない、肉体もあちこち切り裂かれ、手ひどい傷を負った中、更に精神をズタズタに傷つけられ動くことさえ出来ない「うずまきナルト」の姿にシカマルは狂ったように笑い出した。


200803.26

書き逃げ的な拍手掲載品でした(爆)
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