over dose
苦しくて苦しくて、縋りつくように求めて。
それなしではいられなくて。
それしか、もう・・・・。
いつから焦がれているのか、何て。
他人より遥かに性能がいいはずの脳みそを持ってしても解からない。
けれど、気付いた時にはもう、遅くて。
欲しくて欲しくて欲しくて欲しくて。
狂おしい。そんな半端な気持ちじゃない。―すでにイカレちまっているんだ。
元々何かに執着もなければ興味もない。そんな、自分が唯一あの金色に。
あの金色を。
あの金色が。
欲しくて。
求めて。
追い縋った。
「・・・な、もう、いいだろ?」
少しだけ困ったように囁かれる声に、宝物を抱きしめる腕を僅かに強める。
「駄目。まだ足りね」
背中に回された腕をきゅうっと締め付けられて、すっぽりと腕の中に納まった格好のナルトは少し眉を下げて困ったような顔をする。
ぽんぽん、とあやす様に抱きしめ返している背中を優しく叩く。
「・・・・・」
すると無言のまま、抱きしめる腕が更にぎゅっと、けれどナルトが苦しくない力が込められる。
―まるで我侭小僧だ。
解かっているのに、腕の中に閉じ込めた存在を開放することが出来なくて、シカマルは内心苦笑する。
だって、足りないんだ。
この胸の苦しさを、切なさを、恋しさを。止める抑止剤はするりといつも簡単にすり抜けて。強固に閉じ込めているはずの檻をまるで何もないかように、闇に消えていくから。
当時は知ることがなかった事実だが・・・たかが下忍の忍術に暗部ナンバーワンの実力者が引っ掛かるわけもなかったが、持ち前の頭脳を駆使してナルトの弱点を突き情に訴えた。どんなに冷酷な面を見せようとも、下忍で見せていたナルトの素直な優しさは暗部ナンバーワンであろうとも変わらなかったから。
表のナルトを知り、裏のナルトを知り、ナルトの全てを知った。知ったからこそより全てが欲しくて。
そして手に入れた欲しかったモノ。
苦しくて苦しくて欲しくて堪らなかった恋心(よくぼう)を、その存在こそが心満たす精神安定剤。
過剰摂取しすぎて身を滅ぼしたって構わない。
「シカマル、いい加減に・・・・」
「ヤダ」
即答で返し、もぞりと鎖骨の辺りに首を埋める。
―我侭だって、何だっていい。
欲しくて欲しくて仕方がなかったこの存在を手放したくない。
過剰摂取で死に到るくらい、いっそこの身に取り込めたら良いのに。
はあ、と溜息一つ落されて、ぴくり、と肩が動いたけれど抱きしめる腕は一向に外れる気配はなくて。
その気になれば暗部ナンバーワンを誇る忍は逃げられるのだけれど。
やれやれと思いつつナルトは穏やかに我侭な檻(うで)の中で微笑んだ。
2007.08.07
甘えん坊なシカマル(笑)。でも全然安定剤を過剰摂取されてない話です(笑)