「・・・今日も雨だってばよ」
雨と湿気に悩まされる梅雨の時期は嫌いだ。毎日毎日しとしとじめじめ。身体にキノコでも生えてきそうな勢いの、さすがのナルトでさえ気分を憂鬱にさせる。
だって、雨の日は。
傘を持って水溜りを飛び越えても、紫陽花の花が雫に映えても、カエルがゲコゲコ鳴いてたって。
皆みんな早々に家の中に篭ってしまうから。
ナルトがどんなに笑っても、悪戯しても、傘に顔を隠して急ぎ足で去っていくから。
傘に落ちる雨水が奏でる音を楽しめるのは最初だけ。
綺麗な紫陽花、葉っぱにでんでんむし。道端の水溜りに、ぴょこぴょこ跳ねるアマガエル。
皆みんな誰かと一緒なのに、雨の中ナルトだけ一人ぼっちで。
「つまんないってば」
だからナルトも家の窓から外を眺める。
――せめて毛布に包まっていれば、一人でも温かいから。
もう一回呟く。
「雨の日はつまんないば、よ」
梅雨なんて嫌いだってば・・・・。
もそり、と毛布に顔を埋めたナルトの耳にコンコン、とノックの音が聞こえるのはもうすぐ。