「シカマル、シカマルってば!」
ゆすゆすと体を揺すっても梃子でも起きないとばかりに目を閉じ続けるシカマルに、ナルトは頬をぷううと膨らませた。
「つまんないってばよ」
折角遊びに来たのに。
今日はシカマルのオフと聞いて、ここ数ヶ月一日ずっといられるという日がなかったナルトは指折り数えて待っていたそれなのに、寝入っているシカマルの傍を離れることは出来なくて。
ちぇ、と口を尖らせて空を見上げた。
シカマルがすでに暗部に属しているのだと、ナルトは里人に襲われた日。それはいつものように路地裏の片隅に連れ込まれ暴力を振るわれていた時知った。
「いい加減、しとけ」
買い物袋を片手にぶらりと現れたシカマルがナルトを襲っていた、明らかにゴロツキのような里の青年達をあっという間に伸して、記憶を消した。
驚くナルトにシカマルは。
「わり、もう限界だわ」
そういうとナルトを抱いて火影邸へ一瞬にして移動したかと思うと三代目の前で「これからは俺が監視に付きます」と宣言した。
監視。それはナルトに必ず付いている暗部の役目。ナルトはいつ、彼らが傍にいるのかなどわからないけれど、いつだって気の休まることのない視線を向けられていると知っていた。それは幼い頃から・・・火影邸で育てたられて居た時から隠されることない憎悪と殺気の含んだものだったから、どこにいるとは解からずも見られているということだけは否が応でも解かってしまったのだ。
その任務にシカマルが就く?
疑問に思っている間にも話しは進められていたらしく、あれよあれよといつの間にかナルトはどこかどうなってこういう状況になったのかイマイチわかっていないのだけれど。
シカマルと一緒に里外れの森の中、現在一緒に暮らしていたりするのだ。
と、話はそれてしまったが。
暗部でもきっと上位の立場にあるのだろうシカマルはいつだって忙しそうで。
家に帰ってきても一緒に居てもすぐに呼び出しを受けて。酷い時は一月なんてざらに会えないのだ。幾ら影分身を置いていってくれてるとはいえ、学校でも家でも傍に居るのが本人じゃなければ嫌だ、と。
どうしてこんなに優しくしてくれるのか解からないけれど、シカマルはいつだって優しくて。三代目以外に・・・いや、三代目以上に優しい手を、眼差しを向ける人なんて知らなかったから。
ナルトはシカマルだけいてくれればいいと思うようになるまで時間はそう掛からなかった。
そのシカマルがオフになったら久しぶりにナルトに付き合ってくれるといったのだ。だから嬉しくて。いつもは影分身と行っている、ナルトお気に入りの場所にシカマル本体と一緒に行きたいと、願ったのだ。
何だそんなことでいいのかと快諾したシカマルはだがしかし。
「なんで、付いた途端寝ちゃうんだってばよ・・・」
広い広い野原は、どうして魔の森と呼ばれるこの場所にあって、清々しいほどの爽やかな風が吹き。その優しい風に咲き乱れる色とりどりの花々が楽しげに踊るようにそよめいている。目に優しい新緑の、若葉に誘われるようにナルトは遠く見える一本杉のところまで走り出そうとして、シカマルと競争しようと声を掛けようと振り向いた瞬間、そんな気が失せてしまった。
何故ならば、いつの間にか足元にごろりと寝転がっていたシカマルを見た所為だった。
「シカマルのばか」
夜は暗部の仕事に昼間のアカデミー。自分と変わりない年齢で働きまくるっているシカマルが疲れていてもおかしくないと、解かっているけれど恨まずには居られない。ついつい悪口が出てしまうのはとても楽しみにしていたからだ。だから、これくらいは許されるだろう。
「・・・たまには俺と遊んでほしいってば。」
そう言うとナルトは傍でいびきをかいているシカマルにそっと唇を重ねてもう一度言った。
「シカマルのバカ。・・・・大好き」
全然起きる気配のないシカマルに悪口と、起きている時は絶対にいえない言葉を告げてナルトも自棄とばかりに隣に寝転がり。寝転がって見上げた空はとても、とても青く穏やかで。
いつのまにかナルトからも健やかな寝息が聞こえてきたとき。
顔を真っ赤にしたシカマルががばり、と半身を起こし口元を押さえて呟いた。
「ちょー馬鹿。」
それからこの日、どんな進展を見せたのかは二人だけの秘密。