時は巡りて柔らかい日差しが差し込む木陰の下、陽気に誘われ少年はゆるりと瞼を落とす。
訪れたのは春の気だるげな眠り。
花咲き乱れる為の蕾がそこかしこで見受けられる自然の中で、瞳を閉じた少年自身もまるで蕾のようだ。
そっと足音を忍ばせつつ、シカマルは木陰で休む少年―ナルトに歩み寄る。
煌くやさしい光が瞳を閉じている少年の華やかな金色の髪をより輝かせ、瞼を彩るは髪と同じく金色の長いまつげに柔らかなほほに影を落とし。安らかな呼吸は近づいてきたシカマルにも反応は見せず、ただ規則的に繰り返されて。
はらはらと舞い散る花びらに眠る姿はまるで一枚の絵画のよう・・・。
美しい寝顔に思わず見入ってしまうが、視線にも気配にも敏い彼が、一向に起きる様子を見せないことに心が躍る。
―気を、許されているのだろうか。
浮かんだ考えに、否定する言葉はどこにもなく。まさか、とか本当は寝たフリをしているのではないかとか、己の内で葛藤するのみ。
ドキドキする心臓のままに、そっと、はらはらと花弁を散らす桜の太い幹に寄り掛かって眠るナルトのすぐ傍に、ごろりと横になって満開の花を見上げる。
隣から聞こえる健やかな寝息。
風にそよめく桜の、舞い散る様は穏やかで。
裏の世界に生きていることさえ忘れさせてくれるような優しい日差しに、誘われるようにシカマルも目を閉じた。
麗らかなる午後のひと時が、どうか破られませんようにと儚い望みを抱いて今は。
春の誘いに目を閉じて。
すう、とシカマルも安らかな寝息を立てた頃、不意に幹に寄り掛かって眠っていたナルトは瞼を開け、隣でいびきをかき始めたシカマルを見て一つ微笑む。
そして、再び晴れ渡る空を映し出したような碧眼を閉じたのだった。