ザックスは最近戸惑うことが多かった。
何に対してか?
問われれば、とある人物に対してなのだが、別に嫌っているとか嫌われているとかそんなんじゃなく。
むしろ、好意を抱いている相手だからこそ、投げかけられる視線の意図に戸惑うのだ。
「ど〜した〜?」
軽い調子で投げかける、疑問。
共同部屋の片隅で、膝を抱えてお気に入りのクッションを抱きしめながらずっとこっちを見ているクラウド。
クラウドとは、ザックスの弟のような親友。彼と出会って時間は短いけれど、馬が合うというのか不思議と誰よりもつるみ易い。
下手をすると、女の子と遊んでいるよりもコイツと一緒に居る時間のほうが楽しくて一日が終わってる時もあるんだよな。
そんな事を思いつつ、ザックスはクラウドの返答を待つ。
「・・・別に」
ナンデモアリマセン、なんてそんな訳ないだろう、と突っ込みを入れたくなるような答え。ザックスは最近戸惑うことが多いけれどクラウドは、最近こうやってはぐらかす。視線では物言いた気にザックスを見てくるくせに、何も語ってはくれないのだ。
そりゃ、口達者な方じゃないし、言いたい事を上手く言葉に出来ないって悩んでもいたけどさ。
それでもザックスに、何でも話してくれていたというのに、ここ最近のクラウドはおかしい、と思うのだ。
言葉を口にしないクラウド。
けれど、ただ、ただ投げかける視線だけが強く、伝えてくる。
―ザックスが欲しい。
それがどういう意味でなのか。
何も語らないクラウドに、ザックスは戸惑うことしか出来なかった。