両手を広げて

やっと、判った気がする。

―ー貴方は寂しいんだね。

他の追随を許さない程の強大なる力と、何者にも屈しない強き精神力。
いかな芸術家にも表現しきれない美貌に、恵まれ過ぎた体格。
貴方を貴方たるすべてが、貴方を特別とし、特別故に貴方を世界から突き放す。

絶対なる孤独。

それは、どれ程辛いものなのか。
それはどれ程苦しいものなのか。
それはどれ程自由なのか。

小さな、小さなかつての俺の手。
小さな、小さな俺の世界。

その中で、小さな俺が、小さな手で抱いていたのは、小さな俺の両膝。

ニブルのあの村で。
神羅の子と蔑まれ、忌み嫌われ、疎まれて。
母親さえも遠く、一人ぼっちだった。
抱きしめてくれる人がいないから、丸くなって自分で自分を抱きしめた。

その両手が。

ながるる銀の清流に、そっと伸ばされた掌。
それは紅葉の様な小さな子供の手ではなかったけれど。
月の精のような清かにして妖艶たる美しい顔を、そっと覆うように。
しなやかな筋肉と、厚い胸板を持ちながら、均衡の取れた黄金率の長身に少しでもと。
こんなに圧倒的な存在なのに、儚く消えてしまいそうな。
目の前の孤独な人を抱きしめる。

他に何も、何の意味も成さない存在だという俺だけれど。

たった一つ。
出来る事があるというのならば。
それはきっと。


孤独に佇む貴方を抱きしめるということ―――


昨日まで膝を抱えていたこの両手が、貴方を抱きしめる。
ほんの僅かでも、貴方の孤独が癒されるように。
見えない涙を流してる、孤独に侵された魂を、そっと。


そっと・・・・・。



貴方を抱きしめる。

2007.01.29

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