やっと、判った気がする。
―ー貴方は寂しいんだね。
他の追随を許さない程の強大なる力と、何者にも屈しない強き精神力。
いかな芸術家にも表現しきれない美貌に、恵まれ過ぎた体格。
貴方を貴方たるすべてが、貴方を特別とし、特別故に貴方を世界から突き放す。
絶対なる孤独。
それは、どれ程辛いものなのか。
それはどれ程苦しいものなのか。
それはどれ程自由なのか。
小さな、小さなかつての俺の手。
小さな、小さな俺の世界。
その中で、小さな俺が、小さな手で抱いていたのは、小さな俺の両膝。
ニブルのあの村で。
神羅の子と蔑まれ、忌み嫌われ、疎まれて。
母親さえも遠く、一人ぼっちだった。
抱きしめてくれる人がいないから、丸くなって自分で自分を抱きしめた。
その両手が。
ながるる銀の清流に、そっと伸ばされた掌。
それは紅葉の様な小さな子供の手ではなかったけれど。
月の精のような清かにして妖艶たる美しい顔を、そっと覆うように。
しなやかな筋肉と、厚い胸板を持ちながら、均衡の取れた黄金率の長身に少しでもと。
こんなに圧倒的な存在なのに、儚く消えてしまいそうな。
目の前の孤独な人を抱きしめる。
他に何も、何の意味も成さない存在だという俺だけれど。
たった一つ。
出来る事があるというのならば。
それはきっと。
孤独に佇む貴方を抱きしめるということ―――
昨日まで膝を抱えていたこの両手が、貴方を抱きしめる。
ほんの僅かでも、貴方の孤独が癒されるように。
見えない涙を流してる、孤独に侵された魂を、そっと。
そっと・・・・・。
貴方を抱きしめる。